映画が好きな人なら結構「映画を配給するお仕事してみたいなー」っていう人多いですよね。うちの会社が映画系なので、やっぱり面接とかしててもそういう方に結構会います。ただ思ったとしてもなかなか自分で実際に配給をやろうとする人はいませんが。
実際に買い付けようと思えば、映画祭に出展してる大作の映画とかでなければ、100〜300万円くらいで獲得できるんだそう。そこから、日本語タイトルを決めたり、日本語字幕やポスターや上映映画館を決めていく配給であったり宣伝費用とかがかかって、なんだかんだでトータル費用1000万円くらいになるらしい。
その費用を回収するためにまず映画館で流して鑑賞料で売上を作る。同時に作品の宣伝にもなる。映画好きが集まる映画館で作品名を露出できるのはやはり宣伝効果が大きい。映画館上映が終わったら次にDVD・ブルーレイを売る。さらにその後に映画配信サービスに配信権を売って、トータルで費用を回収する。トータル売上が費用を上回れば利益になる。
最初に結構な費用がかかる割に、ヒットなんてなかなかしないので、映画は難しいビジネスなんですね。ただ最近はNETFLIXやamazonプライム・ビデオのような定額の映画見放題サービスが増えてきて、事情が変わってきました。彼らは利用者がやめない限り毎月決まった額を回収するので、1本ごとに収支を合わせる必要がありません。
今までの映画会社とビジネスモデルが違うので業界勢力図が変わってきます。「どう考えてもこの映画の売上は○億くらいがMAXだから、買い付けるならこれくらいの金額だな」という思考回路だったのが、「割高でも利用者が喜んでくれるならOK」という全く違う思考回路で動く人が入ってくるわけなので、既存の映画会社からしたらやりづらいでしょう。
映画業界に限らず、伝統を壊して進化させていくのは異端者たちなので、既存の映画会社とは違うビジネスモデルを持った会社が映画業界の中心になっていくのも納得。
逆に100万円で買える映画もあるわけだから、映画が大好きで、日本に入ってきていない海外の映画を日本語で見られるようにしたい、別に儲けたくてやるというより大好きだからやる、という人であれば、既存の映画館で上映せずに、別のところで売上を立てるというやり方があっても良さそう。
爆音上映やみんなで歌いながら上映するようなイベント上映が流行ってるわけなので、フェス的なイベントやって上映して、あとはネット配信だけにして、という感じにすれば費用もだいぶコンパクトにできそう。
映画が売れないというのは旧来のやり方だと時代に合わなくなって採算が合わない、というだけで世界全体で見れば映画は市場規模が大きくなっているし、人件費を極力抑えて今までと違うところでバリュー出す仕組み作ればまだまだイノベーション起こせそう。
といったようなことを、日本イタリア映画社の黒崎さんとお会いして思いました。黒崎さんは海外旅行の飛行機の中で『Un bacio』というイタリア映画を観て感動して、日本に帰ったらまた観ようと楽しみにワクワクしていたそうなんですが、待てども待てども上映されない。なんと日本の映画会社はどこもその作品の権利を買っていなかったんだそう。それに絶望した黒崎さんは、やっぱり日本語字幕でじっくりと観たいと思って、そのためにはもう自分で配給するしかないと思い、イタリアの権利元の会社にメールして、実際に買い付けたという!
本当に経験ないところから映画配給始めた映画愛にあふれる人でした。未経験からそこまでしちゃう人はなかなかいないらしくて、すごい。で、黒崎さんをそこまで動かした映画というのが『最初で最後のキス』。
最初で最後のキス
↑もうすぐDVDも発売されます。
映画を配給するのに必要な金額は100万円あればできる
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