ベンチャーでいかにして苦闘と向き合うか。『HARD THINGS』

アメリカの有名なベンチャーキャピタルにアンドリーセン・ホロウィッツがあります。投資先としてはFacebookやPinterest、Twitterなど名だたるIT企業ばかりで、そんなアンドリーセン・ホロウィッツを設立したのがマーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツです。

『HARD THINGS』はベン・ホロウィッツによって書かれてるんですが、これはベンチャーで働く人のマインドセット形成にはもちろん、様々な初めての意思決定の際の助言としても非常に価値の高い本だと思います。

ベン・ホロウィッツ自身が創業した会社で起きた様々な困難を実際のエピソードを交えながら、どのように考え、対処すべきか具体的に記載されており、注目すべきはそのほとんどが生々しい失敗談中心で、かなり実践的です。しかも人生で二度と経験したくない事柄の連続と書かれているように、本音ベースで非常に鼓舞される内容。

多くの大成功を収めたアメリカIT企業関係の本は、強者の正論が書かれていることも多いかと思います。ごく一部の圧倒的強者だからできており、そのまま真似をするというのは難しいことも多いと考えいるのですが、この本では困難の連続においてのベンチャーでどのようなマインドセットや運営方法が書かれています。


HARD THINGS

以下、メモです。

  • スタートアップのCEOは確率を考えてはいけない。会社の運営では、答えがあると信じなきゃいけない。可能性が高かろうが低かろうが、する仕事は変わらない。
  • 成功するCEOの秘訣はない。ただしひとつあるとすれば、良い手がない時に集中して最善の手を打つ能力だ。逃げたり死んでしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとして最大の違いを見せられる。
  • 人生は苦闘だ。苦闘とは、なぜ会社を始めたのだろうと思うこと。苦闘とは、あなたはなぜやめないのかと聞かれ、その答えを自分もわからないこと。苦闘とは、気晴らしのために休暇を取って、前より落ち込んでしまうこと。
  • ひとりで背負い込んではいけない。自分の困難は、仲間をもっと苦しめると思いがちだ。しかし、真実は逆だ。責任の最もある人が失うことを最も重く受け止めるものだ。重荷を全て分かち合えないとしても分けられる重荷は全て分け合おう。最大数の頭脳を集めよ。
  • 被害者意識を持つな。困難は、全てあなたの責任だ。人を雇ったのも、決断したのもあなただ。あなたは、リスクがあることを知っていた。誰でも過ちを犯す。自分を評価して、「不可」をつけたところで慰めにもならない。
  • あらゆる人間のやりとりにおいて、必要なコミュニケーションの量は、信頼のレベルに反比例する。
  • マネジャーは自分自身で部下をレイオフしなければならない。
  • 自分の惨めさを念入りに説明するために使うすべての心的エネルギーは、今の惨状から抜け出すため、一見不可能な方法を探すために使うほうがはるかに得策だ。
  • 私はチームに「何」をすべきかは伝えていたが、「なぜ」そうしてほしいかを明確にしていなかったことに気付かされた。
  • 不健全な組織では、みんなが多くの時間を組織の壁や内紛や崩壊したプロセスとの戦いに費やしている。
  • マクドナルドの従業員がそれぞれの仕事のための教育を受けているのに、それよりはるかに複雑な仕事をする人たちが教育を受けないのはおかしい。
  • 採用と面接のプロセスに多大な力を注いでいるのに、人への投資がここで止まっている会社があまりに多い。あなたの教育によって部下たちの業績が1%向上するなら、あなたの12時間によって、会社は200時間相当の利益を得ることになる。
  • 良い製品マネジャーは、状況報告書を毎週時間通りに提出する。規律正しいからだ。悪い製品マネジャーは、状況報告書を時間どおりに提出しない。規律を重視していないからだ。
  • 完全な人間などいない。だから、弱みがないことではなく、強みが何かで人を選ぶことが絶対的に重要だ。
  • 孫武は、古典的名著『孫子』の中で、チームに実現不可能な任務を与えれば武力を損なうと警告している。
  • 人は、自分が気づいていない弱点を直すことはできない。フィードバックを与えなかったために支払うことになる代償は会社業績だ。
  • 組織で問題が生じた時に、必ずしも解決策は必要なく、単に事柄を明確化するだけで良い場合もある。脅迫やセクハラにならない限り罵倒語の使用はOKとはっきりさせただけで、問題は消滅した。
  • 社内政治とは、自分の能力による会社への貢献以外の要素で、地位向上を得ようとするすべての行動を指す。
  • 正しい野心を持つ人材を採用する。正しい野心とは、会社の勝利が第一で、副産物として自分の成功を目指すことだ。
  • 面接の際には、相手が「自分メガネ」で世界を見ているか「チームメガネ」で見ているかを小さな手がかりから判断できることがある。自分メガネの人物は、状況を自分と結びつけてしか考えられない。
  • 一般社員の場合には、それぞれが独自に自分のキャリアパスの充実を考えても良い。しかし経営に携わる場合には、動機が重要だ。間違った動機を持った人物に正しい結果を期待するのは危険な考えである。
  • 会社が肩書を必要とするようになる理由は2つ。①社員が望む。②社員同士で誰が何をやっているのかわかるようにするため。また、顧客に知らせるため。一方で、社員の相対的な価値評価に直結するため、肩書は慎重に扱わねばならない。
  • 会社というのはチーム活動だから、本人にどれほどの才能があろうと、チームメンバーとして信頼されなければその才能を成果には結び付けられない。
  • 年長の経験者を採用するときは、「大人」というような抽象的な目的で考えてはならない。漠然とした目的は悪い結果をもたらす。年長幹部を雇うのは、特定の分野における知識と経験を買うのでなければいけない。
  • この部門では部内の知識と社外の知識とどちらが重要かを意識していなければならない。
  • 外部から入ってきた人材に対しては、現在の企業文化への順応を要求しなければならない。
  • 経営チームのメンバーは、単に目標を達成しさえすればいいというものではない。幹部社員には具体的な目標の達成以外に多面的な能力が要求されるし、何よりチームの一員として機能しなければならない。
  • 日常業務に関してCEOのなすべき最も重要な任務は、社内のコミュニケーションの仕組みを作り、円滑に作動するよう維持することだ。
  • 偉大な企業文化を持っていたが潰れた会社は無数にある。それでも企業文化が重要な理由は、「働くのに楽しい場所」という根本的な価値を維持するのに大きな役割を果たすからだ。
  • 我々の社員で起業家との会合に遅刻した者は、理由を問わず1分毎に10ドルの罰金が課される。この規則によって、起業家よりもほかのベンチャーキャピタリストを大切にする人間はアンドリーセンホロウィッツには無用だとはっきりわからせることができる。
  • 会社のビジネスをコアとなって支えるようなものが企業文化だ。ヨガが出来ることは文化ではない、福利厚生の一環だ。
  • 組織デザインで第一に覚えておくべきルールは、全ての組織デザインは悪いということだ。あらゆる組織デザインは、会社のある部分のコミュニケーションを犠牲にすることによって、他部分のコミュニケーションを改善する。どんな組織化も必要悪であるから、悪が最小であるような選択肢を探す必要がある。
  • 真に偉大なリーダーは、周囲に「この人は自分のことより部下のことを優先して考えている」と感じさせる雰囲気を作り出すものだ。
  • 平時のCEOは企業文化の育成に務める。戦時のCEOは生き残りをかけた闘争に自ら企業文化を作らせる。
  • フィードバックを与えるのは相手の成功を助けるためであり、失敗を願うからではない。相手の成功を願うなら、それを相手に感じさせよ。感情を伝える努力をせよ。
  • 絶対に社員を同僚の前で笑いものにしてはならない。フィードバックの内容は相手の頭を素通りし、相手は恥をかかせたあなたを心から憎むようになる。
  • 単刀直入であれ。一見乱暴に聞こえるかもしれないが、「この点とこの点が理解できなかった。その理由はこうだ」と指摘しよう。ただし意地悪くあるな。フィードバックは双方向の会話でなければならない。
  • フィードバックの結論や理由付けに積極的に異を唱えることを推奨する必要がある。
  • 成功する企業では戦略とはストーリーだ。全ての戦略的決定は誰にも納得のいくストーリーとして提出されねばならない。
  • 正しく運営されている企業の多くは「約束したことは守られねばならない」という原則を厳しく貫いている。ただし、責任追及の度合いは約束した目標の困難さによって変わってくる。
  • 2つの基準を満たすなら買収に応じずに独立企業でいたほうが良い。①巨大な市場にいて、会社は若い段階にある(市場の潜在的規模は現在より少なくとも一桁以上大きいか)。②その市場でナンバーワンになれるチャンスがある。
  • 苦闘を愛せ。自分の独特の性格を愛せ。生い立ちを愛せ。直感を愛せ。成功の鍵はそこにしかない。