営業利益100億円の事業はいかにして生まれたか。『ホットペッパー ミラクルストーリー』

読書

クーポンがいろいろ載っているクーポンマガジンの『ホットペッパー』がどのように生まれたかがまとまった本です。ホットペッパー自体は昔から身近には知ってたけど、ビジネスとしては知らなかったので発見がありました。前事業が7年間赤字の果てのピボットとしてホットペッパーが始まった、という割と散々な状況から如何に組織の再構築と戦略の実行をしていったかというのは物語としても生々しくて面白いです。

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

組織作りと戦略で試行錯誤

ホットペッパーには前身となる失敗事業である『サンロクマル』という街の全てのお店情報を載せるというコンセプトのフリーペーパーで失敗しており、どん底からのスタートであったらしい。かつ組織の大半のメンバーが正社員ではなくパートや業務委託で構成されていて、その組織体制で強い組織にするためにいかにフラットで意見が通りやすい組織にしたかなどの試行錯誤が面白いです。
ホットペッパーというプロダクト自体も、広告主の要望でいろいろとデザインを変えてしまいがちな誌面を9分割のシンプルなパターンを厳守することで営業マンだけでもキレイで読みやすい雑誌として成立させていたりと作り方をかなり工夫していたそう。また、『クーポン付きのフリーペーパーが儲かるらしい』とわかると続々競合がより低価格で参入してきそうですが、どの店のどういったクーポンがどれくらい使われたかというデータをひたすら収集していたので、その情報をもとに「こういったメニューを提供すれば忘年会の予約が増える」というような店舗向けのコンサルをすることで競合への差別化になっていたそう。
以下、メモ。

  • 戦略の大切さは理解され、手間暇やコストがかけられるのに、それを伝えるために手間暇がかけられることはほとんどない。伝える相手の目線に立ち、ていねいに、わかりやすく、繰り返し伝える。「伝える」とは事業マネジメントの重要な責任であり、習得すべき技術である。
  • ヤクルトを毎日届ける仕事をしている方々はヤクルトを届けているのではない。「健康」を届けている。ソニーのウォークマン開発者は携帯音楽プレーヤーを開発したのではない。「音楽と生活する世界」を開発してブームを創った。壮大な目的であればあるほど、数字である目標は価値を持つようになる。
  • 人材が集まってくる組織になるためには、求める能力や資質を明らかにして、組織のうちと外に対して発信しなければならない。そして、その組織に属することによって得られるものを明確にしなければならない。
  • 仏を信ずることは「南無阿弥陀仏」を唱えることとしたことで、親鸞の浄土真宗は広く深く浸透していった。大切なのは、戦略戦術ストーリーが全員で共有されて、日々の行動で実現されることだ。
  • 「誰がバカかわかる」意志決定構造を決して崩してはならない。事業を細分化することはあっても、意思決定の分権化は絶対にしてはならない。
  • ただ単に、売上などの結果を数字として集計するのではなく、結果を生み出すプロセスの数字を重視した。結果としての数字よりも「数字を創る」ための数字を重視して、コミュニケーションすることで工夫やアイデアが生まれるからだ。数字でコミュニケーションすれば、数字に対する執着心とともに問題を解決しようとする工夫やアイデアが生まれてくる。数字に意味と価値を見出す組織をつくらなければならない。
  • 業務プロセスには流れがある。分業化すれば流れは切れて、モチベーションも切れる。そして、本来の目的が切れて、今度は切った業務感のコミュニケーションに莫大なエネルギーがかかる。だから、逆に非効率になる。
  • 素人がプロになる領域を発見し、その領域で圧倒的なプロになり、相談相手に慣れるかどうかが勝負になる。
  • 相手は料理のプロである。しかし、20代〜30代の女性が本当に食べたい料理を知る機会は限られている。ホットペッパーは20〜30代の女性が食べたい宴会メニューについて、圧倒的な情報を収集し、そのターゲットそのものである営業マンがリアリティのある言葉で語る。その限られた領域でプロになる。(プチ・コンサルティング。=プチコン)
  • プチコンが完成された時に、この事業は盤石となった。後発参入競合がいくら低価格戦略で参入し価格破壊をしてきたとしても、顧客が我々に感じている価値は単なる価格ではなく、プチコンという価値を含んだものになっているからだ。
  • 顧客ニーズが多様化しているのに、それを型にはめるのは危険な賭けだという反対意見が出た。型にはめることは個人の個性や成長を阻害するという反対意見も出た。
  • 基本の3つの型ができれば組み合わせや応用も可能になる。剣道で相手の動きは変幻自在で多様だから、基本の方の稽古をしても意味がないなどと誰も言わない。攻める型を持つことが大切で、その攻める型を訓練することがもっと大切になる。
  • 型をつくれば生産性は格段に上がる。同時に営業の成長も早くなる。教育成果も獲得できる。
  • 複雑なのは問題ないが困難であってはならない。そのために、単純化するのではなくシンプル化するのだ。賞品をシンプルに、営業先をシンプルに、営業方法をシンプルに、マネジメントをシンプルにするのだ。
  • 1人の営業マンが業務プロセスに必要な知識やスキルをパターンとしてマスターする。複雑性を残しながら困難性を排除してシンプルにしているだけだ。絶対に単純化してはならない。
  • リーダーが専念する業務を明示することが重要になる。明示することによって必要な能力・脂質が明らかになる。リーダー自身が自分の仕事の範囲を理解し、自分自身ができていることとできていないことが明らかになると同時に、視界が広がり、自分自身の能力開発の課題も明らかになる。事業はリーダーの職務を定義しなければならない。
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